「セックスの向こう側 AV男優という生き方」60点(100点満点中)
2013.2.23(土)より渋谷アップリンクにてレイトショー!以降、全国主要都市にて順次公開予定 2012年日本/86分/マクザム
監督:えのき雄次郎 構成・撮影:高原秀和 出演:日比野達郎 速水健二 山本竜二 平口広美 加藤鷹

男優側に焦点を当てる

AVについて映画を作ろうというとき、まず女優に目が行くのが普通だ。だが、本当に面白いドラマが隠されているのは男優の側だろう。苦労も難しさもはるかにこちらが上なのに、世間(というか視聴者)からの目は冷たい。そんな報われない男たちの物語は、きっと味わい深いはずである。

「セックスの向こう側 AV男優という生き方」は、まさにそのAV男優についてのドキュメンタリー。総勢19名のさまざまな男優たちに、共通の質問をぶつけていく形式の回答集である。

登場する男優陣は上記データ箇所や公式サイトなどを見ていただきたいと思うが、顔ぶれも年齢もバラエティに富んでいる。若い人では80年生まれ。古くは50年生まれまで。父子共演をしたという、ほとんど家業みたいな男優もいれば、どこにニーズがあるのかと思いつつもあるかもしれないと思わされるブサメン男優等々、この業界の懐の深さを感じてしまう布陣である。

ユニークな話で印象に残っているのは、おすすめのコンドームであるとか、使っているサプリメントだとか、遅漏早漏の治し方、といったところか。予想通りだったり予想もつかない話であったり、なかなか面白い。意外と笑えるのが、それぞれの初体験談。笑い話になるような体験を持っているのは、なんとなく羨ましい。そんなこともないか。

知り合いのAV女優と飲んでいると、その本音トークの面白さは比類なきものがあるのだが、彼女たちには夢を売る立場があるので、公共の場でそれを期待するのはなかなか難しい。だが男優には彼女たちほど飾るところがないので、赤裸々な話が聞けるところが本作のポイントである。

女性については加点法で評価するとか、なかなか実践的なアドバイスも聞ける。考えてみれば彼らが仕事で相手をする女優達は、そりゃそこそこ綺麗な人もいるだろうがたいていは自分の好みとは違うだろう。女優は転がっていれば最悪コトはすむが、男優はそうはいかない。好きでもない女とヤるためのテクニックは、そうした場でなくとも役に立つ気がする。立たないかもしれないが。

この映画でもっとも印象に残ったセリフは、イケメン男優のしみけんによる「かわいい女の子で、幸せになれるのは一握り」。それがなぜなのかはぜひ映画館で見てほしいところだが、なんとなく体験的に誰もが感じている事を見事に言い当てている。余裕があったら女性にも見てほしい。

数千人の女性経験がある彼らの言葉は、なるほどじっさい聞いてみると傾聴に値する。こいつはなかなかいいコンセプトの映画であった。

願わくば、単調になりがちなのでもう少し見せ方を工夫してほしいところか。男優に焦点を絞りたい気持ちはわかるが、撮影現場の様子も、もっともっと挿入していいと思う。

日本一有名なAV男優が教える人生で本当に役に立つ69の真実 (幻冬舎アウトロー文庫)
当然この方も出演。しかも意外なことを言っています。
AV黄金時代 5000人抱いた伝説男優の告白 (文庫ぎんが堂)
これ面白そう、ちょっと読んでみたい。


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