『サバイバル・フィールド』65点(100点満点中)
PAINTBALL 2009年11月28日(土)シアターN渋谷他にて全国ロードショー! 2008年/スペイン/カラー/1時間30分/5巻/2457m/スコープサイズ/ドルビーSRD/PG-12 配給:角川映画・アンプラグド
監督: ダニエル・ベンメイヤー 脚本: マリオ・ショーエンドーフ、フアン・ミゲル・アスピロス 出演:ブレダン・マッキー ジェニファー・マター パトリック・レジス
終盤の対決シーンが良くできている
サバゲーをやっていたら、相手がBB弾ではなく実弾を撃ってきました。ルール違反にもほどがあると思うのですが、どうしたらいいでしょうか?
そんな、Yahoo!知恵袋もビックリの嫌過ぎるシチュエーションを描いた『サバイバル・フィールド』は、期待を上回るアクション作品である。
大規模なペイントボール(日本のサバイバルゲームの元となった、ペイント弾で撃ち合う屋外競技)大会に出場するため、各国から集まってきた男女は、広大なフィールドや本格的なミッション指令に期待を高めていた。初対面ながらなかなかの団結力で、敵チームより先にチェックポイントに向かおうとする彼らは、しかし途中の銃撃戦で恐るべき事態に遭遇する。なんと敵側から飛んできた銃弾が、すべて本物、実弾だったのだ。
まるで実際の特殊部隊のような本格装備に身を包み、大物気取りの態度で参加した彼らが、慌てふためいて素人丸出しの動きで逃げ回る姿は、心をチクチクと刺すようなイタさに満ちている。怖いというより、イタいのである。オタクな人がこれを見たら、きっと別の意味でキツい。
撮影がいいので、予算規模のわりには迫力がある。銃弾の軌跡は可視化され、体の一部を撃たれたときの重い衝撃も、スクリーンを通じてこちらに伝わってくる。登場人物の息遣いも意図的によく拾われ、行軍や戦闘の重労働ぶりを感じられる。こういうところが安っぽいと、ただの一発ねたのC級映画になってしまうが、本作は良くできている。
もっと各キャラクターを個性的にし、それぞれの背景や好き嫌いなどを描けばなおよかった。ペイントボールのような、一般人には縁遠く偏見をもたれがちな競技にいったいどんな人が参加するのだろうか。観客は興味を持っている。
だからたとえばステレオタイプな軍おたくや、経験豊富なベテランプレイヤー、あるいは本職が軍人、たんなる金持ちの暇つぶしなど、様々な登場人物を組み合わせていたなら、もっと楽しくなったのではないか。
というのも、本作には「バトルロワイヤル」(高見広春による娯楽小説)的な面白さがあり、それが特に後半盛り上がるからだ。本物の銃はもっていなくとも、それぞれのキャラが本職の技能を生かして「ハンター」に立ち向かう展開というようなものがあれば、結構盛り上がったと思うのだが。
それでも、少なくなっていく生存者が、意外な人物の助けを得ながら敵を逆に追い詰めていく展開などは手に汗握るものがある。「いったいこの大会は誰が、何の目的で開いたのか」といった、破滅的で残酷な真相を予感させる謎も、シンプルながら興味が尽きない。
チームの一人デビッドと敵ハンターの戦いなどは、ひねりのある騙しあいの要素が新鮮で非常に面白かったが、願わくばこのレベルの戦闘、知恵比べを全キャラ戦においてやってほしかった。
そうすればもっとよくなる可能性があっただけに惜しいが、このままでも決して悪くはない。サバイバルゲームを趣味とする人であれば、より楽しめるだろう。もっとも次の週末、敵チームの使用弾にたいして疑心暗鬼になっても知らないが。